OVA『トップをねらえ!』は、庵野秀明監督の記念すべき初監督作品です。
補足的に少々前史を説明します。
1987年、庵野監督らの自主制作グループは、時代の機運に乗じて一気呵成にシーンの最前線に躍り出ます。
それ以前はほとんどアマチュアであったスタッフを率いた盟友・山賀氏が監督に抜擢された『王立宇宙軍・オネミアスの翼』が、バンダイから8億円という巨額の資金出資のもと制作され、坂本龍一氏による楽曲の提供、ハリウッドでプレミア公開されるなど、大きな話題となったのです。
これに伴って発足したのが、『株式会社ガイナックス』でした。

すでに『風の谷のナウシカ』の巨神兵のシーンを任され、トップアニメーターの仲間入りを果たしていた庵野監督も、この作品にはメカ担当として参加します。
宮崎監督の元で培った入魂の作画により、迫力の戦闘シーンやラストのロケット発射シーンを描き、その評価を不動のものとしました。
しかし、スタッフの情熱の迸りに反し、『王立宇宙軍』は興行的に大失敗、ガイナックスは借金を抱えて窮境に立たされます。
ここで挽回を狙った企画が『トップ』だったのです。
そしてこれが、奇しくも監督としての“庵野秀明”を世に送り出す契機となったのでした。
『トップ』には、後の『エヴァンゲリオン』シリーズに通ずる、監督の作家性のすべてが凝縮されているともいえるでしょう。