時は近未来、宇宙へと手を伸ばした人類は未知の宇宙怪獣と遭遇、そのあまりに凶暴で高い戦闘力を誇る怪獣の脅威に、すぐさま対応を迫られることになります。
一方、宇宙怪獣との戦闘で戦死した提督の娘である16歳のタカヤノリコは、沖縄女子宇宙学校に通い、亡父の遺志を継承するため、宇宙を目指していました。
生来気が優しく鈍臭いノリコでしたが、父の元部下であるオオタによって才能を見出され、エリート部隊“トップ”のメンバーに選出されます。
そして、天才として名高いアマノカズミと共に宇宙に向かったノリコは、地球の命運を賭けた戦いにその身を投じていくのです。
まず、当時として画期的だったのは、パロディ性の前景化でしょう。
大枠で『トップガン』と、スポ根アニメ『エースをねらえ!』を折衷し、SFロボットジャンルに嵌め込んだ形式になっており、全シーン全カット、何らかのパロディで構成されているのです。
ほぼ全シーンに渡り、それこそ台詞一言に至るまで先行作品からの引用がなされる徹底性は、同時代にデビューしたクエンティン・タランティーノ監督の作品群を彷彿させます。
また、最終話となる第6話に至っては、すでに「エヴァ」後半の自己解体への志向がはっきりと出ています。
なんと、映像が突如モノクロ化され、クライマックスの一大スペクタクルへと雪崩れ込んでいくのです。
そして、その身に人類の希望を担い、宇宙怪獣に最終決戦を挑むノリコの姿は、確かな手応えで見る者に迫ります。
その熱量は「エヴァ」の碇シンジにもはっきりと受け継がれているといえるでしょう。
「処女作にはその作家のすべてが宿る」という格言がありますが、『トップ』はその後の庵野監督のキャリアを明示する傑作だと断じて大過ないでしょう。