あるいは庵野監督が『エヴァ』を制作する上で、強く意識したとされる『デビルマン』はどうでしょう。
『デビルマン』では、人類よりも遥か前に存在していた、好戦的で合体能力により戦力を高めることができる異形のデーモン族が、神の怒りを買い、氷漬けにされてしまいます。
各地に残る悪魔伝説は、溶けた氷から少数のデーモンが蘇生した結果生まれたものなのです。
主人公・不動明は、デーモンと融合することにより、悪魔の身体に人間の心を持ったデビルマンとなります。
強大な力を持ってもなお、不屈の意志によって人間の心を保持し続けるデビルマンの存在は、人類の敵とされる使徒を元に造られたエヴァにエントリープラグを通して人間の「魂」が融合することと相似的です。

漫画版『デビルマン』のラストでは、恐怖に駆られた群集が悪魔狩りに走り、人類は滅亡、最終戦争に突入します。

つまり、人の敵は人間自身であり、人は善を欲しながら悪をなす、その死角に宿る「悪魔」によって自滅してしまうのです。
そして皮肉なことに、悪魔の身体になりながらも人の心を失わなかったデビルマンは、人類滅亡後の地球でデーモン族との最終戦争を繰り広げるのです。

庵野監督自身が『デビルマン』を指して「話はあれしかない」と語っているように、『新劇場版:破』のラストでは、冷酷な父への反抗を乗り越え覚醒し、使徒を倒して綾波レイを救出したシンジに対し、赤木リツコは「エヴァは神に近い存在になったが、代償としてサードインパクトが到来し、旧人類は滅びる」というような主旨の台詞を呟きます。
新劇場版で、庵野監督がこの臨界点をどう乗り越えるのか、興味が尽きないところです。