そんな車やバイク好きな貞本氏の影響が顕著に現れているのが第壱話の冒頭のシーンでしょう。

シンジを助手席に乗せたミサトが駆る車は、フランスのアルピーヌ社のアルピーヌ・ルノー A310に酷似しています。
ただ、本物は左ハンドルであるのに対し、ミサトが乗る車体は右ハンドルとなっています。
こちらは『N2地雷』で横転させられた後に、ミサトが車を「レストアしたばっかだったのに、早くもべっこべこ…、ローンがあと33回プラス修理費かぁ」と言っていることから、アルピーヌ・ルノー A310をかなり改造をしたものだと思われます。

おそらくは右ハンドルに改造、後部座席に大量のバッテリーを積んでいることから、電気自動車にしたのではないでしょうか?
また第四話でもアルピーヌ・ルノーA310と思われる車は登場していますが、こちらはミサトが左側から降車しているので左ハンドル仕様でしょう。

また、第七話で学校前に横付けされる赤い車はフェラーリ328のように見えます。

こちらのフェラーリ328は1985年から1989年、アルピーヌ・ルノーA310は1971年から1984年まで生産されたスポーツカーなのですが、“旧エヴァ”放送時の1995年でもすでに立派な旧車であり、車好きからすれば憧れの車でした。

おそらく、これらは車好きな貞本氏の物作りに対する“こだわり”だったのでしょう。
そうだとすれば、『エヴァ』は制作サイドの作品の細部にまで至る愛や熱意が、ますます感じられるようにも思えます。
そして、その“こだわり”を発見することも、ひとつの喜びとなるのではないでしょうか。