カヲルがセントラルドグマを下りているとき、「エヴァシリーズ……アダムより生まれし忌むべき存在。 それを利用してまで生き延びようとするリリン。 僕にはわからないよ」と語っています。
旧約聖書では、リリスはアダムのもとを去り、ルシファーと交わって、悪魔リリンを産んでいます。
この関係性はエヴァの世界でも同じですので、カヲルには、人間(リリン)が、相容れない存在であるアダムから作ったエヴァを使ってまで生き延びようとする気持ちがわからなかったのです。
ですが、シンジと触れあい、人間の中に、生命の実を食べて永遠の命を得たカヲルたち使徒にはない「未来」を見たことや、アダムではなくリリスが存在することを知って、ゼーレやゲンドウの推し進めるリリスを「よりしろ」とした人類補完計画の全貌が掴めたことから、「そうか、そういうことかリリン」と呟き、自分が魅(ひ)かれた、もがき苦しみながらも、未来に希望を持ち続ける人類に、道を譲る決心をしたのでしょう。
たとえそれが自分の死に繋がることであろうとも。
なお、カヲルがセントラルドグマに侵入した際、キール議長が「初号機による遂行を願うぞ」と言っていますが、これは、旧劇場版で「エヴァンゲリオン初号機パイロットの欠けた自我をもって人々の補完を」という言葉に表されているように、人類補完計画を完遂するためにはシンジの自我が邪魔だったため、友人でもあったカヲルをその手で殺させることにより、彼の自我をあらかじめ崩壊させておくことが目的だったと思われます。
本来なら、第17番目の使徒を倒した後にシンジを抹殺するつもりだったのかもしれませんが、それが失敗したときのために保険をかけておいたというところでしょうか。